スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「落日燃ゆ」と城山三郎

(つづき)
城山さんの代表作といって良いのが「落日燃ゆ」(毎日出版文化賞 吉川英治文学賞受賞)です。

 小説の主人公は、第32代総理大臣も務めた広田弘毅(1878~1948)。極東国際軍事裁判(東京裁判)において、A級戦犯として文官の中で唯一死刑判決を受けた人です。

 この作品は、ベストセラーにもなり、2,3度テレビドラマ化もされました。
 下の写真は、東京市ヶ谷にある東京裁判の法廷となった、旧陸軍省大講堂(現・防衛省市ヶ谷記念館)です。3年前に見学した時のものです。
東京裁判


 城山さんの「落日燃ゆ」については、以前から「情に流されて描きすぎている」とか「やはり広田にも軍部の独走を止めることは出来なかったから戦争責任はある」等の批判があるようです。あくまでも歴史上の人物としての広田については議論や批判があっても良いとは思います。
 私自身の感想は、現実の広田はどうであれ、城山さんが「あの戦争を防ぐことはできなかったのか」という問いを、広田という一政治家に仮託して描いたのではないか、と思うのです。
 
 広田は本来なら日中戦争をおこした責任で訴追されるはずだった近衛文麿の「身代わり」であったことは事実だと思います。
 不条理な状況下で、広田は戦犯としての訴追を受け、法廷の場に立ちましたが、一遍の申し開きもしようとはせず、従容として死地につきました。
 「自ら計らわぬ」という広田の生き様に、城山さんは武士(もののふ)の心を感じ取ったのだろうと思います。(もっとも、広田は文官でしたが)
 
 今回の展示中でも、城山さんがこの作品の取材過程で壁にぶち当たっていた際に、助け舟を出したのが大岡昇平だったという説明がありました。
 大岡は、広田の長男と学校の同級生で親しい仲であったため、城山さんと広田の遺族との間の仲介役を買って出たのだそうです。城山さんが大岡とたまたまゴルフで一緒になった時に、取材が困難を極めていることを相談したのがきっかけだったそうです。
 そういえば大岡もまた、「レイテ戦記」等で戦争の有様を描いてきた作家でした。
 遺族は、広田の遺志を守り、一切マスコミとは接触を絶って、表に出てくることはなかったのですが、城山さんの熱意が伝わり、重い口を開いて貴重な証言をしてくれたのだそうです。

 城山さんは茅ヶ崎に長く暮らしていましたが、広田が晩年すごした場所は鵠沼でした。同じ湘南の海を眺めて過ごしたであろう広田に、城山さんはどこかシンパシーを感じていたのかもしれません。

 東京裁判から長い歳月がたちましたが、21世紀の現代になり、やっと「勝者が敗者を裁く」という不条理な裁判について我々が自由に語れる日がやってきました。
 どうして広田が近衛の身代わりとなって戦犯訴追を受けざるをえなかったのか、その辺の事情も徐々に明らかになってきています。(そのように筋書きを仕組んだ人間が、残念なことに日本側にもいたのでした)その事が広田弘毅にとって、せめてもの慰めかもしれません。

 「17歳で時間が止まってしまった」(佐高信・談)かつての皇国少年、城山と、過酷な運命に抗えず静かに死地についた広田について、私は勝手に「もののふ」認定させていただき、当ブログに収めることにいたします。

★各ランキングに参加しております。よろしければ、応援お願いします↓
  にほんブログ村 歴史ブログ 幕末・明治維新へ    人気ブログランキングへ 
 
関連記事

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

非公開コメント

ブログランキング
「もののふの心」および歴史的遺産を後世に伝えましょう♪
うさぎ
  ↓ ↓ ↓ ↓
人気ブログランキングへ にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
カテゴリ
ご注意 ごくたまに、「城」「史跡」「お墓」等の話題が、ドラマ関連やその他のカテゴリとして登録されている場合があります。
月別アーカイブ
最新コメント
FC2カウンター
おきてがみ
お気軽にどうぞ(お返事が遅くなる場合があります)
プロフィール

A☆六文銭

Author:A☆六文銭
ブログテーマ
日本100名城完全制覇と有名人の墓めぐり(掃苔)
日本100名城スタンプラリー終了・・・2011年7月、根室半島チャシ跡群にて、無事100名城完全制覇しました。
2010年5月、47都道府県踏破済み。(離島を除く)
歴史の現場を、実際歩いて確かめることをモットーに、全国を行脚中。いつかあなたの住む町へ行くかもしれません。
東京生まれ東京育ち。
大卒後、音楽関係の仕事、専業主婦、現在は零細企業で総務関係の仕事をしています。

★当ブログ内の文章、写真等はすべて無断転載禁止です。宜しくお願いします。
★当方と連絡を取りたい方は、下部メールフォームからお願いします。(ご感想はなるべくコメント欄のほうにお願いします)
※Twitter、Facebookはやってません。

最新記事
おすすめ書籍
リンク
RSSリンクの表示
検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。